80年代の若者たちに



          今の大卒は
          インターを歌えないぜ
          なんせ
          大学の中で政党支持のアンケートをとれば
          いちばん多いのが
          新自由クラブだというもの
          学生運動といえば
          なよなよした民青系全学連があるばかりで
          学生の大多数は
          政治無関心層らしい
          きっとデモなんて
          やったことないんだろう
          機動隊のあの威圧感を
          体で感じたことなんてないんだろう

          公務員の募集に
          応募者が殺到する
          倒産することのないのが魅力らしい
          公務員になる目的は
          ある仕事をどうしてもやりたいということではなく
          自分の生活を
          安定させるためのようだ

          街頭で
          アナウンサーが通行人にインタビューしているのが
          テレビに映っていた
          それは20代前半の若者だった
          「日本の国を守るために、自衛隊は必要だと思います」
          ばかを言ってちゃ困るぜ
          おまえ自身が銃を手に持って
          戦場へ人を殺しに行くつもりなど
          まったくありもしないくせに

          交通事故の加害者にでもなれば
          一発で吹き飛んでしまう
          そんなちっぽけな「しあわせ」を手に入れるために
          それが人生だと勘違いして
          生きているんだろうか

          60年代や70年代を生き抜いてきた俺たちは
          それぞれどこかに日和れない部分はある
          だけど いかにせん
          動きが鈍くなっている
          だから
          突き上げてくれる何かが欲しいのだ

          若者に何かを期待しているなんて
          しらじらしいことは言わないけれど
          ちっとは攻撃的になろうぜ
          守ろうとすることから
          新しい展開は生まれない
          少しは骨っぽいところも見せてはくれないか
          でないと俺たち
          みんなを信じられなくなっちゃうぜ

                                 (1980)