季 節



          エンゲルスの言った
          「国家は『死滅』する」の言葉が
          ずいぶん心のよりどころだった

          「アウフヘーベン」というのも
          矛盾をいっぱい抱えているときには
          魅力ある言葉だった

          行き詰まったときに
          具体的な行動が起きなくても
          それらの言葉が
          いらだちを押さえてくれた

          より科学的に
          より弁証法的に
          物事を捉えようとするのだけれど
          どうもこの頃
          考え方が短絡しがちだ

          あれほどあった「自信」が
          すっかり消えてなくなり
          豊かなはずだった心は
          すきま風が吹くようになり
          自分の態度を反映するのか
          他人の目が冷たい

          賽の河原で
          小児が小石を積むように
          くずされてもくずされても
          根気よく積み直していくように
          ひとつひとつを
          もう一度築いていかなければならないのだろうか

          青空は澄みわたり
          朝晩の冷気が
          肌を心地よく刺激する
          季節だ
                               (1982.9.17)